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新型コロナ国内感染、終息はいつ? SARSは約半年

国内で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が広がりつつある。この先、国内での感染動向はどうなっていくのだろうか。大阪大学感染制御学の森井大一氏、朝野和典氏に現状の分析と今後の予想について寄稿してもらった(※この記事は、日経メディカルに2020年2月26日に掲載された記事の転載です。情報は掲載時点のものです)。

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新型コロナウイルスについては、「どこで感染したかはっきりしない」いわゆる“疫学的リンクが追えない感染例”が各地で確認されるようになり、国内感染期に入ったと考えられる。今後は、急激に国内の感染者が増えていくと考えられる(図1)。

図1 新型コロナウイルス感染症の動向の概念図

水際対策は失敗したのか?

国内感染期と聞くと、政府が行っていた「水際対策が失敗した」と考える人も少なくない。しかし、水際対策の目的は、必ずしも「海外で発生した新興感染症を国内に持ち込ませない」ことではない。新型インフルエンザ等に関する政府行動計画にも「水際対策は、あくまでも国内発生をできるだけ遅らせる効果を期待して行われるものであり、ウイルスの侵入を完全に防ぐための対策ではない」と書かれている。今回は、インフルエンザではなくコロナウイルス感染症だったが、水際対策の意義が変わるものではない。

1月後半から2月初旬にかけて、全国の地方衛生研究所や大学等においてPCR検査が実施できる体制が整えられた。また、ほとんどの医療機関は、実際の患者を目にする前に、対策を講じる時間を得た。これらのことをもってしても、検疫を中心とした水際対策がそれなりに機能したと考えていいだろう。

ピークを低く、後ろに

国内での感染者の急増は不可避である。2009年のH1N1インフルエンザパンデミックでは、2000万人が感染した。今回もそれに迫る規模の感染になる可能性がある。最終的には、今後数年を掛けて、おそらく大多数の日本人が一度は新型コロナウイルスに感染することになるだろう。

人類がある種の感染症に初めて接すると、爆発的な流行をもたらすことがある。いわゆる新興感染症の脅威は、その感染症に対する集団免疫がない中で流行が起こるためである。しかし、流行はピークを作って、やがて下火になっていく。これは、社会の中に既感染者が増えることで、集団としての免疫が構築されるからだと考えられる(図2)。

図2 社会における新興感染症の広がりと集団免疫獲得の概念図 赤が感染者、青が未感染者、黒が既感染者

感染そのものを防ぎきることはできないとしても、取るべき対策はある。ピークを可能な限り低く、そして後ろにずらすことだ。感染のピークにおいては、医療者も感染する可能性が高くなる。そのため、医療提供体制は、平時よりも脆弱化する。そこへ多数の患者が発生すれば、医療の需給バランスが一気に崩れることになる。例えばECMO[注1]のような極めて高度な医療技術は、ごく限られた専門施設でしか提供しようがない。

ただし、ピークを後ろにずらして時間を稼ぐことで、抗ウイルス薬やワクチンの恩恵を受けることができるかもしれない。

[注1]ECMO(extra-corporeal membrane oxygenation):人工肺とポンプを用いて心臓や肺の代替を行う治療のこと。重症呼吸不全などの患者に対して行われる。体外式膜型人工肺。

終息の見込みは?

今回の新型コロナウイルス感染症が終息する見込みは、神のみぞ知るとしか言いようがない。しかし、参考になるデータはある。季節性インフルエンザは毎年11月頃から始まって、2月頃にピークを越え、4月頃に終息する(図3)。

図3 過去のウイルス感染症の動向

例外は、2009年のH1N1だけだ。この年は、夏ごろから流行が始まり、ピークは11月で、2月頃には終息した。H1N1はその後も、ほぼ隔年で数百万人から1千万人程度の大流行を起こしているが、夏季に流行が起こったのは、パンデミックとなった2009年だけだ。日本人にとっての未知のウイルスとの遭遇という意味では貴重な経験であったが、この経験から類推すると感染が落ち着くまでには半年前後かかるかもしれない。

また、同じコロナウイルス感染症であるSARSを見ても、2002年末から2003年5月頃までの約6カ月の流行であったことが分かる。SARSが6カ月で終息したのは、集団免疫が構築されたからなのか、季節が変わったからなのかは分からない。新型コロナウイルス感染症の季節性変動については、南半球での疫学状況や、一年を通しての流行状況が今後どのように推移するかを今しばらく見守る必要がある。

(文 森井大一、朝野和典=大阪大学感染制御学)

Via
https://style.nikkei.com/
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