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「中国ウイルス」で責任逃れを図るトランプ、情報操作の一部始終

<新型コロナウイルスは「中国の施設から流出した」と主張するトランプや右派メディア、虚偽をまき散らす政治指導者が国民から支持されるようになる情報操作のプロセスとは>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、中国の邪悪な科学者が生物兵器を開発しようとして、コウモリのおしっこの扱いを誤ったために拡散した! ──米共和党政治家や右派メディアがこの種の主張を始めたのは意外でない。アメリカで5万人を超す死者が出て、失業率が20%を達しているのは、トランプ大統領の責任ではなく、全て「彼ら」の責任だ、というわけだ。

新型コロナウイルスが中国・武漢の研究施設から流出したというのは明らかに、トランプ支持派による情報操作だ。私はこれまでのキャリアを通じて、この種の工作をいくつも見てきた。情報操作が行われると、やがて政治指導者が広めたい「真実」が真実として受け入れられるようになり、虚偽をまき散らす人たちが国民から支持されるようになる。

情報操作は、以下のように行われる。まず、どこかのメディアが、打ち消したい情報とは異なる主張をする。断片的な状況証拠や偶然の一致を根拠にして主張を展開し、陰謀をほのめかす。そのメディアは、別に大手メディアである必要はない。

次に、もっと有力なメディアや有名人がそれに言及する。「~~かもしれない」「~~という報道もある」といった言葉と共に、その情報にお墨付きを与えるのだ。すると、複数の「真実」が並び立つ状態になり、真実が相対化されたり、否定されたりする。

トランプが対応の遅れで非難を浴び始めていた今年2月、保守系タブロイド紙のニューヨーク・ポストは、「中国の研究施設からウイルスが流出した」ことを中国当局が認めていないという記事を載せた。同紙のオーナーは、トランプ支持者であるメディア企業経営者のルパート・マードックだ。

4月になると、熱烈なトランプ支持派のトム・コットン共和党上院議員が、保守系ではあるが権威ある経済紙のウォール・ストリート・ジャーナル(やはりマードック傘下)への寄稿でこう述べた。「米政府は、新型コロナウイルスが武漢の中国政府の研究所由来のものかを調査している」

トランプの広報機関に等しいFOXニュース(これもマードック傘下)もこの話を取り上げ、米情報機関もこの件を「調査」したなどと報じた。そして、トランプ自身も「中国ウイルス」という言葉を使い始めた。こうして、悪いのは中国で、トランプには責任がない、と主張する報道が大量に流れるようになった。

しかし、武漢の研究施設を訪れたことがあるアメリカの一流科学者たちはそろってこの疑惑を否定している。米情報機関も、中国の科学研究や生物兵器開発と新型コロナウイルスを結び付ける証拠はないと結論付けている。そもそも、情報機関が調査したのは、中国に疑念を抱いたからではない。ホワイトハウスから命令されたからだ。

つまり、ホワイトハウスとトランプ支持派は、自分たちで中国が疑わしいと言い、政府機関に調査を命じておいて、その類いの説を取り上げた報道や、調査が行われたという事実を理由に、その説に信憑性があるかのように主張している。これは情報操作の古典的なやり口だ。 CIAの定番ジョークによれば、大惨事が起きたときは、何も認めず、全てを否定し、徹底的に反論せよ、と言われる。トランプは今回初めて、CIAのアドバイスを採用したらしい。

ウイルスが中国の施設から流出したというトランプや右派メディアの主張は、全て虚偽と妄想だ。この種のデマは社会の信頼感をむしばみ人々の安全を損なう。その一方で、トランプの嘘とデマ、そして救いようのない無能ぶりによる死者は、アメリカだけでいずれ10万人を突破するだろう。

Via
https://www.newsweekjapan.jp/

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